今日は、「アナと雪の女王」の感想、エルサが雪の女王になるまでの苦悩について思ったことを書きます。今更感もありますが、もしよろしければお付き合い下さいませ。
エルサの苦悩とアナへの強い思い
自分を偽り、押し隠すことは何よりつらい。
「アナと雪の女王」を観て強く感じたことです。
自分の魔法で妹を傷付けてしまったエルサ。二度とこの悲しみを繰り返さぬようにと魔法の力を封印します。アナを大切に思うからこその決断。それから十数年、エルサは秘密を悟られないように自分の世界に閉じこもります。
罪の意識、後悔の念、孤独、両親の死、自分の存在意義、女王としての自覚……。
エルサの苦悩は計り知れません。アナはエルサの部屋のドアを何度もノックします。そのときエルサは何を思ったのでしょう。アナに触れたい。でも、触れれば傷付けてしまう。だから、触れてはいけない。近づいてはいけない。その葛藤を想像するだけで苦しくなります。
エルサはずっと自分を責め続けていたんじゃないかと思います。「私があのとき魔法を使っていなければ」と何度も悔やんで。思い出すたびに苦しくて。「なぜこんな体に生まれてしまったんだろう」と自分を呪った日々もあったかもしれません。
吹っ切れた人の心は何よりも強い
何年も隠し続けた魔力もついには抑えきれなくなり、秘密をみんなに知られてしまいます。
逃げ出すエルサ。孤独と恐怖の中で必死に我慢してきたのに。誰も傷付けたくないのに。そして、雪に覆われた山奥に辿り着きます。ここであの「Let It Go」。
エルサは「このままじゃだめなんだ」と気付きます。もう知られてしまったんだから隠す必要なはい。エルサは初めて魔法の力を思う存分使ってみます。今まで知らなかった感覚、自分の能力に驚き「私にはこんなことができるんだ!」という喜び。
エルサが最初に作り上げたのは、子どもの頃アナと遊んだときに作った雪だるま。エルサはずっとずっとアナのことを思い続けていた。どんなに自分を押し殺しても、大切な思い出は消し去れなかった。
ここで私の鼻から最初の鼻水が垂れます。
エルサは自分の力をどんどん解放していきます。魔法で作り上げた階段を駆け上るエルサを見ていたら、胸が締めつけられました。今まで抱えていた苦しみを手放すことができた。やっと自由になれた。
「これでいいんだ」初めてエルサが自分を肯定できた瞬間。
悲しみが消えたわけじゃない。孤独もつきまとう。でも、自分を隠す必要はない。ここにいれば、もう誰も傷付けずに済む。
エルサの中にあったさまざまな感情が溢れ出します。
このとき私の鼻水もキラキラ輝いていたことでしょう。
こちらに英語版と日本語版の動画があります。英語版の字幕を見るとエルサの心境がよく伝わってきます。
「ありのままの姿見せるのよ」
アナが冬の王国を作り出したエネルギー。
何かに似ていると感じました。きっと誰もが経験したこと。
例えば、親の願いを叶えようと必死に頑張る子ども。たくさん勉強をして、いい学校に入ること、一流企業に就職すること。親は自分の幸せを願って道を示してくれた。親のためにも「良い子」でいたい。大切な人が悲しむ顔を見たくない。
でも、本当はやりたいことがあった。ずっと気付かないふりをしていた。もう抑えられない。
「僕は、絵を描きたいんだ!」
試しに筆を走らせてみると、どんどん作品ができ上がる。「こんなこともできる」「あんなこともできる」今まで感じたことのない感覚。僕は表現する喜びを知った。
……というような。
本当の自分を押し隠していると、どこかで無理が生じます。否定せず、ありのままを受け入れた瞬間に人は自由になれるのかもしれません。当然、自由には責任が伴うのだけれど。
大切な人を思うからこその苦渋の決断
アナを傷付けたくないと国を離れるエルサの姿を見て、ある難病患者さんの話を思い出しました。
痛みに堪え切れず離婚を選ぶ【脳脊髄液減少症】 | Plus-handicap
私が彼の立場だったらと想像してみました。
この病気は一時的な苦しみではない。自分の病気を理解して支えてくれる家族。本当にありがたい。そんな人と出会えて幸せ。それなのに、自分は何もしてあげられない。感謝すればするほど申し訳ない気持ちが強くなる。自分が嫌になる。ずっと一緒にいたい。でも、相手の悲しむ顔を見るのは何よりつらい。大切な人が少しでも笑顔になれる選択をしたい。幸せになってほしい……。
劇中でアナとエルサは魔法を制御する方法を見つけます。そうして、二人は仲良く暮らすことができて「あぁ、本当によかったね」と祝福の笛をピーピー吹きたくなるようなハッピーエンド。
でも、現実はそう簡単にはいきません。命をかけて支えても、病気の痛みを制御する術はないかもしれない。
もし氷を溶かす方法が見つからなかったら、アナとエルサは一体どうしただろう?
答えは見つかりません。でも、アナならきっと「絶対にできる!」とエルサを励まし、答えを求めて飛び出していくことでしょう。
最後に
本編が終わり、余韻に浸りながらエンドロールを眺めて思います。
「この映画を作った人たち、すごい!」
エルサは当初、悪役的な存在だったのだそうです。それをスタッフが議論を重ねて、もう一人の主人公に変えたと。
『アナと雪の女王』はなぜ面白いのか ディズニーアニメを率いるジョン・ラセターの力
今回書いたのはごく一部をピックアップしたものですが、物語を通して見ることで発見できることもたくさんありますし、いろいろな切り口から楽しむこともできます。
そんな素晴らしい作品の製作に関わったすべてのスタッフ・キャストに敬意を表します。
<オススメ絵本>
イメージの魔術師と呼ばれたエロール・ル・カインが描いた『雪の女王』。「アナと雪の女王」の原案となったアンデルセンの童話です。
療養を始めて、一日の大半を布団の中で過ごしているときにいただいきました。「キレイな絵を見て少しでも気が紛れるように」と。うつで無感情だった私が美しいと思えた素敵な絵本です。
お話ありがとうございます。
もうたくさんの方々がこの映画についてもうたくさんの方々がそれぞれに語っています。
“Let It Go”をわたしなりに翻訳すれば「だしちゃえ~(なんかアレのひびき…)」かも?
わたしも最近障害者手帳を出して国債を買いました。税金優遇を受けられるのはありがたいのですが、そこの支店長がわたしのことを制限行為能力者と混同して失礼なことばのかずかず。よほどキレようかともおもいましたが、まさかね…
「ありのままの自分」って、あるのかしら?
エルサは”The past is in the past”と歌っています。一日々々「昨日できなかったことが今日できるようになる」ことが人格をみがくことなるのだとおもいます。中学時代みたいに腹筋が何度もできることは重要ではないのかもしれません。
“Let It Go”がこの映画の結論じゃなかったとおもいます。
エルサはこの歌のあと、軍隊相手に人殺しまで犯しそうになります。そしてアナがエルサ自身の力で命を落としそうになって…
“No rules for me. Let the storm rage on”
この考え方がエルサ自身を守るかしら?
さいごは周囲を尊重しながら自分の力を活かすようになったのだと、わたしは記憶しています。
紙一重さん、コメントありがとうございます。
「だしちゃえ~」ってすごくしっくりきます。さまざまなシチュエーションをカバーする言葉ですね。
国債ですか、すごいですね。ワタクシ無知なもので……。今、財務省のHPを見たら、イモトアヤコさんが微笑んで「注目ッス!」と言っていました。でも、現実はそんなイメージとはかけ離れたものなのですね。悲しいことです。だからといって、「だしちゃえ~」と心の内をぶちまけるわけにはいきませんね。
TPOをわきまえなければ、ルールがないのはただのワガママです。「Let It Go」もこの映画の結論ではありません。それでも、私はそこに至るまでの過程が印象深かったんですよね。
物語は人それぞれ感じ方が違って、そこにはその人の心が反映されているという点でも非常に興味深いですね。