『盛りあがらないデート』1巻を読みました。めちゃくちゃ面白い。
ヤケクソでマッチングアプリに登録した二人がデートをするお話です。タイトルのとおり、デートは盛り上がらない。劇的な展開もない。すれ違いや和解が訪れるわけでもない。
にもかかわらず、ページをめくる手が止まらない。
なぜか。
それは、この二人が恐ろしいほどに噛み合っているからでは?
いやいや、作品説明にはこうあります。
「しかし会話はかみ合わず、ローなムードが漂うのだった。やることなすこと裏目に出て、驚異的に盛りあがらないデートとなってしまう」
確かにそのとおり。
でも、本当に盛り上がらない場って、地獄じゃないですか。息が詰まるような、早くその場を立ち去りたくなるような。でも、この二人の場合はそうではありません。ローなムードが漂っているというだけ。
そう、二人はこの「ローなムード」を共有しているのです。そしてその状況を受け入れている。理想との乖離にもがくこともなく、ただそこにいる。気まずい沈黙でさえ、絶妙な「間」として素材の一つになっている。
一緒にいるのがしんどくなる理由の一つとして挙げられるのが、笑いのツボがずれていること。片方が渾身のボケを放っても、相手に刺さらない。その繰り返しが積み重なると、じわじわと心を削られます。でも、この二人にはそういった会話の消耗感がありません。「そこ?」「変なの」と思っても、無視しない。たとえ声には出さずとも何らかの反応をしている。たぶんこれがかなり大きい。「はい/いいえ」で終わらないキャッチボールが成立するのって貴重だよ……ちゃんと反応して声を出してくれることも……。
会話を続けるためには、相手を見ることが必要。しかし、余裕がなく自分のことで頭がいっぱいのときには、外に意識を向けられなくなります。「自分がどう見られているか」という不安も目を曇らせます。
翻って漫画のこの二人。切羽詰まったものは感じられません。執着を捨てた諦めのようなムードがある……というのは言いすぎだとしても、いい具合に力が抜けているように見えます。おそらくヤケクソでマチアプに登録したという背景が効いているのでしょう。
こういうタイプの人間は、いわゆる陽キャな人たちからすると「暗い」と笑われることがあります。でも、この漫画の二人を見ていると、その評価は一面的に思えます。二人のやりとりには、高い会話能力と鋭いセンスが宿っている。
読んでいて、『セトウツミ』を思い出しました(過去投稿)。川べりで男子高校生の二人がただ話しているだけの話。事件は何も起こらない。でも、ドラマがある。淡々としているけど密度の高い対話なんだよなぁ……。どんな球でも拾って返す懐の広さみたいなものというんですかね。
私はそういう小粋な会話が好きみたいです。派手な演出より、味わいよね~と。
まあそれも要するに、作者のセンスのよさってことですよね。
という帰結で満足感を得られたので、今日はこのあたりで。
2巻・3巻、どうなるんだろう? 読んでいる側としては盛り上がってきておりますけれどもね。
