「彼女はただの友達。それ以上でもそれ以下でもない」
「私はダメ人間。それ以上でもそれ以下でもない」
こんな言い回し、よく見聞きしますよね。私もけっこう使います。
が、「友達以上でも友達以下でもないって、それ厳密に言ったら『友達でもない』になっちゃうんだよなぁ」と言っている人がいて、「アッ、ほんとだ」と気づきました。
「以上」はそのものを含む、「より大きい(あるいは小さい)」はそのものを含まない。そうですそうです、学校でそう習いました。
数字を使うとわかりやすいですよね。例えば「私は18歳です。それ以上でもそれ以下でもありません」は、「18歳以上でも18歳以下でもありません」。じゃあ一体何歳なの? って。いや、まぁ、こんな言い回しは普通しないんですけど。
で、このことに気づいて以来、「それ以上でもそれ以下でもない」と見聞きするたび、「そこには何があるのだ?」と放心しがちです。以上でも以下でもない「それ」は一体何なんだ? と。
言うまでもなく、「それ以上でもそれ以下でもない」は強調表現で、「言葉通りの意味だよ、他意はないよ、盛ってないし、足りない部分もないよ、まさにそのものだと言いたいんだよ」と伝えるための言葉。
だから、こうやって云々かんぬん言うのは野暮とも言えるのですが、なんか面白くて見つめちゃいますよね、以上でも以下でもない「それ」や示された境界を。
中国では「以上」「以下」の使い方が微妙に違うようで、「それ」を含むかどうか曖昧らしいという見解も見かけました。
ちなみに英語では、「Nothing more, nothing less.」と表現するそうです。
有名なお話にも「それ以上でも以下でもない」の訳が使われていました(こちらは「neither more nor less」)。
“When I use a word,” Humpty Dumpty said, in rather a scornful tone, “it means just what I choose it to mean-neither more nor less.”
「わたしがことばを使うときには、ことばはわたしの選んだ通りの意味になるのである――それ以上でも以下でもない」ハンプティ・ダンプティはつっけんどんに言いました。
訳が適切かどうか、私にはよくわかりません。ハァ、いつになったら私の英語力は向上するのでしょうか……。
ことばって本当に面白いですよね。可変性がすごい。次元を超える。まるで魔法です。
(たぶん私は「次元」が何かわかっていないので、今度はそれを考える必要がありそうです。わからないことだらけ。楽しいですね)