3月は別れの季節ですね。
インターネット上では、2019年3月にYahoo!ジオシティーズが終了して、2020年3月末にはファイルダウンロードの利用も終了&全データ削除。いよいよ完全にサービス終了ということで、寂しさがつのります。
ジオシティーズの他にも、Yahoo!ブログ、ヤプログ、魔法のiらんど、はてなダイアリーが終了してしまいました。新たなサービスとして生まれ変わったものもありますが、サービス終了と同時に消えてしまったらしいサイトもあり、やっぱり悲しい気持ちは拭えません。
残された手元のブックマークが切ないです。昔ながらのテキストサイトも見られないものがいくつかあります。新しい場所を確保して遷移するよう設定されているサイトを見ると感動します。思わず「ありがとう……」と手を合わせてしまいます。
紙のように劣化することがないと思っていたデジタルデータですが、置き場所ごとごっそりなくなってしまうことに対しては認識不足でした。「永遠なんてないんだな……」とか思わずつぶやいてしまいます。
いや~、寂しい。
蓄積されたデータが全部消えてしまったんだなと思うと、なかなか喪失感が大きいですね。もう存在しないとわかっているんだけれど、メモしておいたブックマークのリンクをクリックして「サービス提供を終了しました」「このページは存在しません」的な表示を確認するという不毛な行為をしたりしています。未練がましい人間です……。
別れとそれに付随する気持ち
先々回から紹介している絲山さんの本にも寂しさについて書かれていました。
絲山さんはこれまで、長い間「さびしい」と言うのはみっとないし自立の妨げになると考えていたといいます。しかし、あるとき心境の変化に気づいたそう。
最近、古い知り合いに会って別れるとき、ごく自然に「さびしいなあ」と思ったのである。それは久しぶりのものだったが、自分一人で感じるぶんには、決して悪いものではなかった。自分に足りない部分を満たしてくれる柔らかさがあり、他人を尊重したときに生まれるものだということにも気がついた。「さびしさ」もネガティブな感情だが、相手にぶつけたり、ほかの感情や行動と結びつけるべきではない。昼間に対して夜があるように、自分の周囲にある豊かなものの一端として静かに受けとめられるようになりたいと思う。(『絲的ココロエ』より)
本当にそうだなぁとしみじみ思います。なんでしょう、こんなふうに受けとめられるようになったら、とても優しい気持ちで日々を過ごせそうではないですか。
同じく作家の川上未映子さんは「「お別れ」がこの世でいちばん本質的なイベントだと思う」と言っていました(『たましいのふたりごと』より)。なるほど確かにそうかもなぁとこれまた納得。
「わかれはいつもついて来る 幸せの後ろをついて来る」と中島みゆきは歌っていましたが、他に何か別れの曲で好きなのあったかなと考えたとき、パッと思い浮かんだのがザ・ハイロウズの「見送り」。
何でいつも見送る側は所在なく立ちつくすんだ
何でいつも見送る側はただの風景になるんだ
別れた直後の情景や心情がありありと思い出されて「すごい…わかる……」と聞くたび思います。駅まで見送りに行くときもそうだし、火葬場にいるときのことを思い出してみても似たような心持ち。この歌は完全なお別れじゃなくてまた会えるから「照れ笑いとかしちゃうんだ」。これもまたかわいいじゃないですか。とてもいい。
「別れ」は、死別かそうじゃないかによって質が全然違うのかなとも思いますが、人が死ぬときに「しばしの別れ」と言うこともあるし、川上さんの言葉を思い出してみても、完全に違うものだと言い切れないような気もします。
「生」というものが、やっぱり他者によって規定されてるって感覚が強いからかもしれない。他者がいてこそ、って感じ(『たましいのふたりごと』より)
絲山さんが寂しさについて書いていたように、何事も表裏一体。別れは喪失であると同時に「生」とか「幸せ」を際立たせるものなんだなーと思ったら、まぁそれはそれでありかなというか、肯定的でよいものにも感じられます。
「こんなにつらいなら出会わなければよかった」みたいな気持ちはすごくわかるし、自分もそういう思いを抱きがちなんですが、ジオシティーズなどのテキストサイトおよび管理人さんに対してはまったくそんなことは思いません。むしろ出会えて感謝ありがとうまじリスペクトOH YEAH! てな感じ(?)です。
「生」や「幸せ」の状態を強く感じて、思い入れが強いほど、別れがつらくなる。それはつまり、その人との関係性をものすごく大事にしていたんだよねと考えると、それもまた素晴らしいことなのかなと思います。
「失ってから初めて気づく」ということはよくあるので、出会いを大事に、今を大事にしよう。大事にしすぎて固執しちゃうと離れるときに大変だから、ほどほどに距離は取りつつ。
そんなようなことを思いました。
更新ありがとうございます。
だから、この距離感が、ちょうどいい。