少し前に「あざまる水産よいちょまる」という言葉を耳にしました。
ギャルの方がテレビで言っていたので、ギャル語・若者言葉ということでいいのでしょうか。
最初は「は?え?あざ…?は?なにって???!」と面食らったものの、「激おこぷんぷん丸」みたいで楽しげな言葉だなと感心しました。
「あざまる水産」は「ありがとう」、「よいちょまる」は「いい感じ」「めっちゃ幸せ」を意味するようです。
「あざまーす。」を「磯丸水産」とかけている? よいちょまるは「ヨイショヨイショヨイショ~!」的なことでしょうか、はたまた「良い調子。」とか?
私の世代で言えば「チョベリグ(超ベリーグッド)」あたりでしょうかね。すごいダサいすね、わかりやすいけど。
いずれにしても「あざまる水産」「よいちょまる」は語感が可愛らしくてとても良い。
この言葉をそらで言えるようになってから、私は落ち込むたびに口にして気分をごまかしています。「はいもう無理」の代わりです。
で、これがなかなか効果的なんですよね。
通常よりトーンを上げて「よいちょまるぅ~↑↑↑」と言うのがポイント。
そうすることで、何か楽しい気分になれます。思考が停止するので「はいもう無理」も和らぎます。すべての感情・感覚を「ヤバい」で代替しているときのようなラクさと楽しさがあって心地よいです。
嘘っぱちっくハゲぼよよんと胡蝶の夢
「あざまる水産よいちょまる」で思い出したことがあります。
高校生の時、友人が口にしていた言葉、
「嘘っぱちっくハゲぼよよん」
意味はよくわかりません。当時も尋ねたような気がしますが、要領を得ない回答だったのか、記憶に残っていません。厳密な意味を問うのは野暮だよなと感じていた気はします。
語感が楽しくて気に入っていたことは確かです。その証拠に、自分の自転車に「嘘っぱちっくハゲぼよよん2号」と名付けていました(使用許諾済み)。ちょっと恥ずかしいですね。ここだけの秘密にしてください。
とか言いつつも、やっぱりなんか好き。今この言葉を味わってみても、良いなぁと思います。
まず文字にするだけで楽しい。口に出しても愉快。語感がいいし、濁音・半濁音・促音のバランスも絶妙。ぱぴぷぺぽの破裂音は口唇が気持ちいいというような解説をピコ太郎のPPAPが流行ったときにどこかで読んだのですが、多分それに通じる気持ちよさがあるのだと思います。
そして、「嘘っぱちっくハゲぼよよん」が何を意味しているのか、イメージとか概念としては何なのかと考えてみてもおもしろい。
何が嘘なのか、嘘っぽいとはどういうことか、何がハゲなのか、何がぼよよんしているのか、さっぱりわからない。この表現する気のなさが最高。
ちなみに私の中では、禿げ頭のピエロが飛び出す色鮮やかなビックリ箱がチラついております。
このイメージはさておき、ぼんやりと言葉の意味を見出しつつ味わってみれば、何だか、人生を無常を謳っているようにも感じられて、これまた良い。
胡蝶の夢のコミカルバージョンみたいです。胡蝶の夢とは、夢の中で蝶としてひらひら飛んでいるところで目が覚めて、自分は蝶になった夢を見ていたのか、今の自分は蝶が見ている夢なのか、という中国の思想家・荘子のお話。
蝶々がハゲで、ひらひらがぼよよんに対応します。
夢の中で禿としてぼよよんしているところで目が覚めて、自分は禿になった夢を見ていたのか、今の自分は禿が見ている夢なのか。
ほら、どこか似てると思いません?
夢か現か幻か。何がホントで何がウソ?
嘘っぱちっくハゲぼよよん。
あざまる水産よいちょまる~!
ハゲぼよよんがよいちょまる
あと、語感だけでなく、リズムも良いんですよね。
「嘘っぱちっくハゲぼよよん」
「あざまる水産よいちょまる」
これらのリズムを抽出すると
タタッタタッタ タタタタタ
タタタタタンタン タタタタタ
タタタタタの5音が気持ちいいですよね。短歌や俳句もそうですけど。思わず口ずさみたくなるわけだ~。
そして私はしみじみ思ったのですね、語感とリズムは人生を豊かにしてくれるのだなぁと。プラス楽しげなイメージも大事。厳格なイメージではなく、ナンセンスなのが良いです。
若者言葉は旬が短いので、「あざまる水産よいちょまる」は今のうちにしっかり味わっておきたいと思います。一人でこっそりとね。