精神科で診察を受けるとき、どんなふうに症状を説明していますか?
心や体の状態を言葉で説明するのは難しいものです。
今日は、診察時に伝えておきたいポイントについて考えます。「主治医にうまく話せない」と悩んでいる方に参考にしていただければ幸いです。
最低限伝えておきたい5つのポイント
診察時に伝えておきたいポイントは次の5つです。
- 体の調子
- 心の調子
- 睡眠
- 食欲
- 薬
うつ病の場合は「自分の考え方が甘いだけだ」と思って、見逃してしまいがちな症状もあります。
まずは、うつ病の主な症状について知っておきたいところ。
うつ病診断のための重要な症状
- 集中力と注意力の減退
- 自己評価と自信の低下
- 罪悪感と無価値感
- 将来への悲観的見方
- 自傷・自殺の観念や行為
- 睡眠障害
- 食欲の障害
- 妄想
- 幻聴
- 身体の症状
(『日本一役に立つうつとストレスの本』より)
<参考サイト>
・厚生労働省 – みんなのメンタルヘルス「うつ病」
・ファイザー株式会社 – こころの陽だまり「うつ病の症状」
回答に困る質問「どうですか?」
診察のはじめに必ず聞かれる質問。
「どうですか?」
通院を始めた頃は、この質問をされるたびに困惑していました。
「どうですかってどうもこうもありませんよ先生」
「なんでそんな答えにくい曖昧な質問をするのよ~」
でも、これにはちゃんと理由があるんですよね。
質問は大きく分けると2種類。
・オープンクエスチョン:答えの幅が相手に委ねられている質問
・クローズドクエスチョン:答えがYesかNoに絞られる質問
「どうですか?」はオープンクエスチョン。答えを限定しない質問をすることで、患者が自由に話せるようにするのだそうです。
例えば、「気分の落ち込みはありましたか?」と質問された場合。
自分の中では、頭がボーっとする症状が気になっていたとしても、「気分の落ち込みは~?」と聞かれることで、落ち込みはどうだったかという点に注意が向きます。それが適切な答えを導くこともあれば、良い影響を与えない場合もあります。「落ち込み」というワードを先取りすることで、医師の考えを押しつけるような形になってしまうかもしれないよね、と。
ただ、あまりにもうつ症状が重い人には、負担を減らすために、YesかNoで答えられる質問をした方がいいケースもあるそうです。
もし「どうですか?」という質問につまってしまったときは、困惑をそのまま伝えるのも一つです。
「自分でもよくわかりません」
「症状をうまく話せなくて、困っています」
「混乱しています」
「えーっと、うーんと、あぇぉ……」
うまくフォローしてくれる先生だとありがたいですね。自分の意見を押しつけることなく、患者の気持ちをうまく引き出してくれる先生もいます。そういう先生に出会えるとラッキーです。
完璧な答えでなくても、表情や診察に臨む姿勢から伝わるものもあります。リラックスして、素直な気持ちを伝えるのが一番です。
診察受け答えシミュレーション
「うまく答えられなくても大丈夫」となど言っているこのわたくし、テンパるのを回避するため、通院日前にはいつもシミュレーションをしていました。私と同じように診察で何を話すべきか悩んでいる人がいるかもしれませんので、一部ご紹介します。
「どうですか?」の回答例
「気持ちが落ち込む日が多かったです」
「身体が重くてだるい日が続きました」
「わりと気分よく過ごせました」
まず、ざっくりと答えます。そのあと一呼吸おいて、気になる症状について詳しく話していきます。
「毎日とにかく身体がだるくて、頭がボーっとしています」
「以前に比べると、起きていられる時間が長くなってきました」
「めまいやだるさ、身体が重いと感じることが少なくなりました」
「頭ではダメだとわかっていても、死についてばかり考えてしまいます」
「症状がひどかったときに比べればましですが、あまり良くなったと感じられません」
「ドーンと落ち込んだりすることが少なくなってきました」
「何時に寝ても、必ず夜中の3時に目が覚めます」
「悪夢ばかり見て、目覚めてもどっと疲れた感じです」
「薬を飲めば、眠れるようになりました」
「何も食べる気がしません」
「何を食べても味がしなくて、砂を噛んでいるようです」
「それなりに食べられるようになってきました」
「あまり薬の効果を感じられない気がします」
「この薬を飲み始めてから、足がむずむずしてじっとしてられなくなりました」
「この薬の効果と副作用をもう一度教えていただけますか?」
あらかじめ回答カードを用意しておくイメージです。頭が働かないときには、けっこう役立ちました。
「うまく話せなかったー」と自己嫌悪に陥りがちな人は、簡単に準備しておくと、心の負担が軽くなるんじゃないかなと思います。
うつ病診察の負担を軽くするメモ
いくら診察シミュレーションをしても、うつ症状が重いと、伝えるエネルギーが枯れ果ててしまいます。そんなときはどうしたらいいのでしょうか。
私は、話をするのもつらいときには、あらかじめメモを用意しました。
・体の調子
・心の調子
・睡眠
・食欲
・薬
・その他(不安に思っていることなど)
「どうしてもダメならこれを先生に渡そう」と力を振り絞り、ひょろひょろの字で症状を書きとめました。
メモを持参すると、診察で困り果ててしまうことが少なくなります。「言うべきことは全部書いてある」ということが安心感につながったのでしょう。
そうやって体調が悪かった時期は、メモを見ながら棒読みで症状を伝えていました。
……と言うと習慣的に実践したように聞こえますが、面倒臭がり屋の私がメモを用意したのは数えるほどです。
メモを持参するにせよしないせよ、症状や感じていることを整理できるので、紙に書き出してみるのはオススメです。やらなかった人が言うのも何ですが。
下手でもいいから伝えることが大切(オノマトペが便利)
私の話は擬音が多い。
ある日の診察で改めて実感しました。
「わーっとなって、ガーッと上がって、ドバドバ―って感覚で、グワングワンして、最終的にババーンって感じで、チーンとなって終わり」(だいぶ脚色)
身振り手振りを交えて話す私。「擬音多すぎだろ」「ちゃんと説明しろよ」と突っ込まずにはいられませんでした。
日本語は他の言語に比べて、オノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語)が多いと聞いたことがあります。
身体感覚を言葉で説明するのは難しいものです。そんなとき、擬音は便利です。大部分をオノマトペで埋めるのはさすがに使いすぎなのかしらとは思いますが、伝わればそれでいい。堅苦しい言葉でたんたんと説明するより和やかな雰囲気になるからいいよねーという言い訳のもと、私は好んで使っています(というより自動的にそうなるのです。先生的にはどうなのでしょうか)。
とある医師の言葉。
なにか伝えたいことがあるときには、必ず言葉にしてほしい
(『日本一役に立つうつとストレスの本』より)
表情や佇まいから伝わるものもあると先ほど書きましたが、先生は超能力者じゃないので、何でもかんでも汲み取れるわけではありません。当たり前のことですが、やっぱり言わなきゃわからない。
うまく言おうと力む必要はなくて、先生を信頼して、何かしらの言葉で伝えようとする姿勢が大事なのかなと思います。
<参考書籍>
三野善央 (2010)『精神科と産業保健と心理教育の専門医が書いた 日本一役に立つうつとストレスの本』メディカ出版
お疲れ様です。
今日の診察で、いつものことなのですが言いたいことが言えず軽く自己嫌悪していたので、この記事を見れて良かったです。次回行く時はメモを持っていこうかなと思います。いつもタメになる記事をありがとうございます!!