先日、映画感想まとめてお伝えの回をやったばかりなんですけど、その直後にめちゃんこ面白な映画を観てしまいましたので、また感想を書きます。この前書いた内容に照らすと、これは10選に入れたい。それくらい面白かったです。
以下ネタバレなしでいきます。が、余計な情報に触れたくないよという人は、ここでお別れです。またお会いしましょう。
今回観たのは、チャーリー・カウフマン監督・脚本の『もう終わりにしよう。』(2020年)。
チャーリー・カウフマン作品が好きなので、観る前から期待値はどうしても上がっちゃってたわけなんですけど、期待を裏切らない面白さでした。いや、想像以上だったかな……もっとわけわからんヘンテコリン系を想像していたから、普通に面白がれた……いや、普通ではないか、ちょっとシリアス系だったからそう感じたのかな? 「なんじゃこりゃギャハハ」系じゃない面白さ。「笑える」とか「楽しい」だけじゃなく、戸惑いと切なさと共感と、それから人間らしさについて考えちゃうよね~というような興味深さ。
この作品はですね、たぶん全人類が当てはまるんじゃない?という感じでですね、何をどうやっても「あ、俺だわ」になってしまう感があるんですよね。あるあるとはちょっと違って……自分もたどる道が今と違ったらあり得たことかもみたいな。他人事なのに、胸がぎゅーっとなるのですよ、今の自分だったらそうはしないけど、きっと自分もあの人だったら……と考えずにはいられない。めちゃ感情移入できてしまうんですね。そして、感情移入できてしまう、それ自体にも切なさを伴うと言いますか。迷いとか、孤独とか、傷ついたその心の痛みとか、なんかすごいわかるな~って。
それが「面白い」という感想になるのは自分でもちょっと不思議なんですけど。うーん、「わかるわー」でなんか笑っちゃうんですかね。泣き笑いみたいなところはあるかも。
で、この鑑賞後の余韻がまた印象的で、「前にもこの感覚なったことあるよな~」と思って考えていたのですが、「これだ!」という確信は持てず。複数の物語が混じり合っている可能性があります。鑑賞後に残った感情、たとえば喪失、安堵、自己嫌悪。あるいは恥ずかしくて赤面してしまうような渇望。思い出すたび声を上げてしまう後悔。そうやって抽象化していけば、共通する作品はいくらでも見つかりそうな気もしてくるので、なんかそういう全部盛り作品ってことにもなるのかも?
チャーリー・カウフマン作品の特徴とも言えるメタ構造によって、思考と情動が忙しくて盛り盛りな印象になっているところもあるでしょうね。
そんなこんなで大満足……いや、スカッと快感的な面白さではないんですけれどもね。モチーフの使い方の妙をもう一度じっくり味わいたいなと思いました。
<原作小説>