悩みや困り事を解決したいとき、どう考えを進めればいいかわからなくて、行きづまってしまうことはありませんか?
そんなとき役立つ思考法があります。
物事を多面的にとらえ、思考停止にならないための考え方「知的複眼思考法」です。
いわゆるロジカルシンキングの本です。難しい用語を使わず、わかりやすく解説されています。
具体例を挙げながら、自分の頭で考える道すじを示してくれる本書は、思考の基礎トレーニングとなります。
今日は、考えの途中で行きづまってしまったときのヒント集として、問いのパターンをまとめました。
書くことで考える
考えるためには、表現しようとすることが重要です。
表現する方法は主に2つ。「話す」と「書く」です。
このうち、書くことは、思考を整理する上で強力な助けとなります。書くためには、頭の中にあるぼんやりとしたものを明確な言葉に置き換えなければいけません。そのために、ああでもないこうでもないと考えることになります。さらに、書く行為は一人でするもの。自分のペースでじっくり考えを進めることができます。
私はきちんとした文章を書くのが苦手なので、友達に話すつもりで書きます。重要なのは、とにかく頭の中にあるものを文字に置き換えること。書くことのハードルをできるだけ下げて、気楽にやることも大事です。過去の自分や未来の自分に向けて書くと、自然に素直な言葉が出てきます。
こうして、自分の考えを文字で表現することで、頭の中を整理し、はっきりと考えを定着させることができます。
禁止語 ―「わかったつもり」防止
すぐに実践できそうで、なおかつ良いトレーニングになりそうだなと思ったのが「禁止語」をつくることです。
これは、抽象的な言葉を使っちゃダメよ、というルールです。
例えば、個性、生きる力、自然破壊、人権、インターネットなどなど。「何となく」理解している言葉を使うと、考えを止めてしまいます。その結果、何となくわかったつもりになってしまい、わかっていないことも自覚できないまま……と何ともまぁ耳が痛い話です。
そういうわけで、抽象的な概念や紋切型の言葉は、他の表現で言い換えて、自分がちゃんとわかる言葉で書いてみるべし。これは、かなり効果が期待できそうです。脳みそコネコネ。
大きな問いを小さな問いに分解する
では、具体的な問題を考えていくための方法について見ていきましょう。
本書では、大学の研究テーマに関する説明が多いのですが、日常の身近な悩みにも応用できます。
基本的な考え方は、まず大きな問いを小さな問いに分解すること。漠然とした考えをはっきりさせるために、次の質問をしてみましょう。
<問題・悩みに対して>
「どうやったらうまくできるか?」
「どうしたらよい◎◎◎ができるか?」
「誰を念頭に置くのか?」
「ターゲットは誰か?」
「○○をどう活用するか?」
「△△のリソース(時間、お金、人)をどこにどれだけ使えるのか?」
「そもそも、よい◎◎◎とは、誰にとってよいのか?」
「どんな判断基準でよいのか?」
―― 説得力? わかりやすさ? アイデアのよさ?
→「そもそもよいアイデアとは何か?」
―― 有効性? 実現可能性?
じゃあどうする?
うまくいかなかったとき、原因探しをして落ち込んでしまうことはありませんか?
そんなときは、「なぜ?」ではなく「どうやって?」に問いの形を変えると、ネガティブな思考の流れを変えることができます。
「うまく◇◇するにはどうしたらよいか?」
「目的は?」
「どんな手段・方法がある?」
「◇◇とはどういうことか?」
「なぜそれが問題なのか?」
「違いは何か?」
「そうして得られるものの価値は?」
「○○はどうなっているのか?」
「どうしてそうした違いが生まれるのか?」
流れとしてはこんな感じ。
「うまく~するとは具体的にどういうことか?」
「なぜそれが問題なのか?」
「なぜ今それが必要なのか?」
――「~のため」「~だから」
・~できると便利
・~できないと困る、不安
→『○○を△△する方法を習得すればよい』
『◎◎の資料を集めればよい』
・それがないと~になってしまう
「~になるとはどういうことか?」
「できる場合とできない場合の違いは何か?」
「そうして得られるものはどれだけの価値があるか?」
「その問題を立てることで、誰が得をするのか? 誰が損をするのか?」
「その問題が解けたらどうなるのか?」
―― 答えをリストアップ
・高い評価が得られる
・充実感や満足感が得られる
・収益が上がる
などなど、よい結果が見込まれそうかな……?
→「このために必要なことは何か?」
「なぜ」「どうなっているか」を重ねる
問題の原因について考えるときは、2種類の質問「なぜ」「どうなっているか」を交互に重ねると、考えを進めやすくなります。
<複数の要素に注目する問い>
「なぜ?」
「本当に……になっているのか?」
「……になるとはどういうことか?」
「~~はどうなっているのか?」
「本当に○○が……になった証拠はどこにあるのか?」
ここから「○○が……になったのは△△だからだ。根拠は□□」という見込み・予想を立てられます。
また、「なぜ?」の主語を分解することで、より具体的に考えることができます。
日常でよくあるのは、「みんな」とか「世間」とか。
○○はどうなっているの?
なぜ?
それはどういうこと?
どうしてそうした違いが生まれるの?
何が結果に影響を与えているのか予想すること、2つ以上の要素に目を向けることが大切です。
ぐるぐる思考に要注意
心が弱っているせいで、うまく頭が回らないときがあります。悲観的になってネガティブな考えしか浮かばなくなると、負のループにはまりやすくなります。
もっとがんばらなくちゃ
↓
できない
↓
つらい
↓
休みたい
↓
私は甘えている
↓
もっとがんばらなくちゃ
↓
以下ループ
冷静に考えられないときは、思考を強制終了しましょう。考えはなかなか追いやれないものですが、それでも、ちょっと休憩。
簡単にできて、それなりにうまく気を紛らわせる方法は、私の場合、
・寝る
・音楽プレイヤーの電源をON
考えるのは、心と体の調子が整ってから。
ネガティブな考えしか浮かばないときは、「下手の考え休むに似たり」と言うことにしています。
というわけで、悲愴モードに突入したら、さっさと休むべし。
あなたはダメじゃないのです。病気だから、心身が疲弊しているから休むのです。
まとめ
頭の中でいろいろなことを考えて、悩みをこねくり回しても、適切な答えはなかなか出てきません。
悩みや日常の問題を整理するためには、
- 書く(ノートやパソコンなど)
- 困っていること(問題、悩み)をはっきりさせる
- 問いを分解する
- さまざまな視点からとらえる
ここで挙げたテンプレートを使いながら考えてみることで、解決のヒントを見つけられるのではないかと思います。
当然、問いの形は考えるテーマによって変わってくるので、すべてに当てはまるものではありません。それでも、思考が停止してしまいそうなとき、考えを揺さぶるトリガーとして助けになりそうです。
常識的なものの見方にとらわれず、考えの連鎖を生み出し、思考の運動を呼び起こす「知的複眼思考法」。くり返し練習して、少しずつ身につけていきたいですね。
<本日の一冊>
苅谷剛彦 (2002)『知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ (講談社+α文庫)』講談社
もっと早く出会いたかったなぁ~思う本です。10代でこの考え方を学んでいたら、私はもうちょっとましな人間になっていたんじゃないかと思わずにはいられません。ホント、これ大袈裟じゃないです。
「自分の頭で考えよう」とはよく言われることですが、具体的なやり方をわかりやすく教えてくれる本はなかなかありません。
自分の頭で考えるためには、基礎固めが必要です。
- 情報を正確に読み取る力
- ものごとの筋道を追う力
- 受け取った情報をもとに自分の論理をきちんと組み立てられる力
こうした力を鍛えるトレーニングとして本書は最適です。
このページで挙げた問いのテンプレだけではピンとこない部分が多いと思うので、興味のある方はぜひ手に取ってみてください。