うつ病と診断された人の約10%が、実は双極性障害だった。
そんなデータがあるそうです。(うつ病だと思っていませんか | 日本イーライリリー)
海外では、
・うつ病の症状で受診した人の16%が双極性障害だった *1
・うつ状態で受診している人の20~30%は双極性障害 *2
という報告もあるとか。
*1 双極性障害ABC | すまいるナビ
*2 双極性障害(躁うつ病) | 厚生労働省
難治性うつ病として長期治療をしている人は双極性障害の可能性が高いと聞いたこともあります。
文化的な違いや、日本の調査結果が少ないことなどから、はっきりとしたデータは得られていないようですが、うつ病患者にとって他人事ではないお話です。
双極性障害の診断には数年かかることもあり(平均7.5年とも)、医師にとっても、うつ病との区別はとても難しいようです。
私もうつ病と診断されて治療を始めました。双極Ⅱ型障害と診断されたのはそれから約4年後。これはまだ早い方だったんですかね。
でも、私はこのことを否定的に考えていません。診断名は便宜的なものでもありますし、重要なのは診断の正しさよりも症状を改善すること。そのために治療を施してくれた医師には感謝の気持ちでいっぱいです。
【私の体験談と学び】
抗うつ薬を飲んでいるのにうつ病が治らない理由 ― うつ病患者の4割は躁うつ病?!
誤診ってどの程度を言うの?
精神疾患の誤診について書かれた記事がありました。
患者の4割が誤診・誤診疑い経験 | yomiDr.(読売新聞)
これを読んで思ったのは、「何をもって誤診といっているのかな?」ということ。
アンケートの質問は、「これまで誤診を受けた(診断が間違っていた)ことがあると思いますか?」。
思ったかどうかは、その人の捉え方によって変わりますよね。
例えば、医師がはっきりと断言できないときに「『○○病』の可能性があります」と言った場合。あとで診断名が変わって、患者が「間違ってた!」と思えば、誤診に入れられてしまいます。
医療の世界では、「後医は名医」という言葉があるそうです。後で診る医師は、最初の医師の見立てを元に考えられます。患者がその治療に満足していないことも含め、より多くの情報が得られるので正確な診断ができると。
情報量だけではなく、診る時期も違います。時間の経過によって症状が改善して、後から見た医師の腕が良かったみたいな感じになってるけど、別に前の医師の判断は間違ってなかったよね、というケースもあるとか。
診断名が変わったというだけで、「誤診だ」「間違いだ」と言うことはできません。場合によっては、あえて診断名を伏せることもあると聞きますし、患者側の答えだけでは判断しかねます。
今の診断が絶対じゃないと知っておくことは大事
誤診という言葉には抵抗がありますが、診断が適切ではない可能性があると知っておくことは大切です。
先の記事には誤診の内容について詳しく書かれていませんし、統合失調症、発達障害、てんかんなどの診断名変更について詳しいことはわかりません。
ただ、自分自身の経験と、私なりに学んだことからも、精神疾患の診断は微妙で難しいものなんだなぁと感じます。
「うつ病か双極Ⅱ型か」の判断の難しさだけでなく、抑うつ症状があらわれる病気は多岐にわたります。
双極性障害については、双極スペクトラムという考え方があります。(参考)
- 双極性Ⅰ型障害
- 双極性Ⅱ型障害
- 双極かも(うつ病とも双極とも言えない)
- まったく不明
はっきり線引きはできないので、虹のようなグラデーション(スペクトラム)として捉えましょうということだそうです。
他の精神疾患もきっとそうなんでしょうね。自閉症スペクトラムというものもあります。
さらに、薬の使い方もいろいろ。効くかどうかは個人差がありますし、処方内容だけで診断が間違っていると判断することはできません。
また、主治医が患者の精神状態や性格を考慮して、言葉を選んでいる場合もあります。
だから、診断名にはあまりこだわりすぎない方がいいと私は思っています。
そのかわり、わからないことや疑問に思うことはどんどん聞く。不安な気持ちも遠慮なく伝える。
冷静な判断ができない状態で、あれやこれやと一人で疑念を深めるのは危険です。不安がますます大きくなるだけで良いことはありません。
まずは医師を信頼して治療を続けること。
診断名よりも、自分が苦しめられている症状に重きをおいて、理解を深めていくのがベストかと思います。
自分で考えて、納得できる環境を整えよう
「医師の指示に従いましょー」と言っても、中には信頼できない先生もいるかもしれません。
先の記事にも、医師の仕事ぶりについて疑問を示すアンケート結果があります。
今後の治療方針・選択肢などの説明について
「しっかり受けた」 24%
「まったく受けていない」 25%
治療についての説明をまったくしない先生がいる!? なんとも残念な結果です。
ただ、これもまた回答者の主観によって答えは変わります。「まったく説明を受けていない」と言う人がいるからといって、その人の主治医が「患者の思いをくみ取らず、診察を一方的に進める医師」と決めつけることはできません。患者さんは「聞いてない!」と言ってるけど先生はちゃんと説明してたよ、なんてケースもありそうですよね。
しかしながら、患者が「聞いてない!」という認識である以上は説明が足りないことに変わりはないので、そこは先生がんばってください、ということでございます。
記事にあるように、不誠実な医者の存在が精神医療の質を低下させているという指摘は、まったくその通りです。
でも、それ以上に誠実に取り組む医者がいるということは、強調しておきたい事実です。
不適切な医療を改善するのは当然のことですが、医療者を感情的に責めているだけでは病気はよくなりません。私も「先生のバカバカバカ!」と思うことはありますが、医療内容の問題と、性格的な問題を混同しないようにしないとな~と気をつけています。
大切なのは、医者まかせにしないこと。自分の症状を把握するために勉強して、診察で現状をきちんと伝えることも大切だと思います。先生はエスパーじゃないので、言わなきゃ伝わらないこともあります。情報が限られれば、正しい診断もできません。
先生との相性もありますし、どうしても主治医を信頼できないときは、転院をおすすめします。セカンドオピニオンも気軽にはできないかもしれませんが、選択肢の一つとして検討してみると良いですね。
体調が悪いときにはそんな気力もなくて大変かもしれませんが、家族や周りの人に協力してもらうなどして、どうしたら良くなるか具体的な解決策を見つけていきたいものです。
みんなのこころが元気になることを祈って。
<双極性障害・参考サイト>
双極性障害(躁うつ病) | 厚生労働省
基本的な知識がまとめられています。
双極性障害委員会 | 日本うつ病学会
患者さんとご家族に向けた、双極性障害を正しく理解するための解説書「双極性障害(躁うつ病)とつきあうために」(PDFファイル)をダウンロードできます。
躁うつ病のホームページ
脳科学研究者・精神科医である加藤忠史先生(@KatoTadafumi)によるサイト。双極性障害の解説、治療法、患者さんやご家族の手記も紹介されています。
双極性障害(躁うつ病)情報サイト | 日本イーライリリー
症状、発症のきっかけ、治療法などの知識を図解とともにわかりやすく解説しています。病気との付き合い方、症例、経験談も紹介されています。
双極性障害 | こころの健康情報局 すまいるナビゲーター双極性障害の早わかりガイド、症状を紹介するアニメーションから学べます。脳科学的な視点からの解説もあります。
<関連書籍>
私は、適応障害、睡眠障害、パニック障害、抑うつ状態と診断されていますが、確かに他の病名も出てきそうな状態でしょうか?一応セカンドオピニオンも受けて同一の診断が出たみたいですが、患者的には病名どうこうより、身体の不具合を何とかしてくれ!と言うのが本音だったりします。
kanabus_fanさん、コメントありがとうございます。
そうですね。心身の不調を改善することが一番。そのためにできることを模索しながら、医師の力を借りて学びを深めていきたいものです。
なみさん、はじめまして!
いつも興味深く読ませて頂いています。
私は双極性障害で、今の主治医に診察してもらって7年ですが、未だに自宅療養です。
遅々として回復しないので医師の腕を疑ってしまいます。主治医がどんなにいい医者か一番良く分かっているのに。
私も早くなみさんのように回復したいです。
次の記事も楽しみにしていますね。
まなみさん、はじめまして。コメントありがとうございます。
7年という長い療養期間。身体的にも精神的にも大変な毎日だったと思います。なかなか回復しないもどかしさは何とも言い難いつらさですよね。
医師の診断が適切かどうかは判断が難しいところです。先生によって治療スタイルも違うようですし、相性もありますし……。いろいろな先生の意見を聞けるのが理想ですよね。セカンドオピニオンのような制度をもっと気軽に利用できるといいなぁ~と思います。
まなみさんの心と体が少しでも軽くなりますように。またのお越しをお待ちしております。