「メンヘラ」を見下してバカにする人間

赤い菊

「メンヘラ展」が開催されるそうです。

メンヘラによるアート展「メンヘラ展 Special」開催 | Fashionsnap.com

「メンヘラ」という言葉にドキッとしました。「メンヘラ」と呼ばれて傷ついている人の姿が目に浮かんだからです。

主催者のあおいうにさんは、あえてその言葉を使っています。彼女は傷ついていないのでしょうか。

いくら「メンヘラ」を“心の病を抱える人”という意味で捉えても、悪意はつきまといます。ネットで使われる「メンヘラ」は否定的な文脈で使われることが多いから。

そんな中でも「メンヘラ」という言葉を採用した「メンヘラ展」の作家さんたち。

私は心を掴まれました。

そして、「『メンヘラ』って何なんだろう……?」という疑問がムクムクとふくらんでいったのです。

 

「メンヘラ」を名乗る理由

メンヘラ展のアートにも興味はありますが、それ以上に「なぜ『メンヘラ』という言葉を採用したのか?」という点が気になります。

まず、私の頭に浮かんだ「メンヘラ」を使う意図は4つ。

  • 自分が「メンヘラ」であることの表明
  • 「メンヘラ」と呼ばれることに対する反骨精神
  • 「メンヘラの可哀相な私を見て! かまって!」というアピール
  • インパクト大のネーミングで集客

おそらく、3つ目は違うでしょうね。関連サイトやあおいうにさんの言葉にそのような要素は見つかりません。まったくゼロではないのでしょうが、「私を見てほしい、わかってほしい」という思いはメンヘラ関係なく、誰もが持っているものです。

「メンヘラ」をタブー視しないこと。これが一番の目的なのかな、と私は解釈しました。

精神疾患を抱えていることを告白している女優の遠野なぎこさんは、自ら「メンヘラ」を公言していくとブログで語っています。

差別的に使われる事が多い言葉だけど…私は『メンヘラですけど、それが何か?(ノ゚ο゚)ノ』という気持ちでいつもいるし、それくらい強い自分でありたいのであえて使っています。

差別的に捉えるのは周りであって、意地悪な人達がネット等であえて書き込む言葉であり…そこで傷ついていたら、そんな最低な輩達の思うツボです。

なので、私は堂々と“メンヘラ”である事を公言していこうと思います。言葉に出す事も全然平気。

自分達の病気を私たち自身が恥ずかしいと思っちゃいけないし、意地悪な人達の攻撃を逆手にとってやりたい。

『あなたとの約束』より)

本当にその通りです。遠野さんは強い人。尊敬します。

そして、あおいうにさんのサイトやツイッターにも、同じような強さと確固たる意志を感じます。彼女のことをよく知らないので、上っ面をすくうことしかできないのですが、それだけでも私は何やら心を動かされているらしいのです。

メンヘラ展の目的は何か。

メンヘラ展の公式サイトにはこうあります。

「メンヘラ達がより社会と繋がることが出来るようになること」

「メンヘラ展という概念そのものをブランド化することによって、美術史上にその名を刻むこと」

「メンヘラ展」はあくまで記号。

こうやってあーだこーだ言ってないで、いっぺん見てみ? ということですね。

 

なぜ「メンヘラ」という言葉に抵抗を感じるのか

「メンヘラ」は難しい言葉だと思います。

差別的な意味合いで使う人が多いので、基本的にネガティブな印象。自分勝手で周囲を振り回す「迷惑な人」というイメージでしょうか。

ニコニコ大百科にはこうあります。

メンヘラとは、2ちゃんねるのメンタルヘルス板にいるような人間のこと。ネットスラング。

またそれが転じて、心に病気を患った人を指す。

これだけ見れば、否定的な意味合いはそれほど強くありません。なぜ、これが差別的な意味合いを持つようになるのでしょう。

ピクシブ百科事典には、「恋人に異常な程の執着と依存を見せ、恋人が離れようとすれば自傷行為に走る」 とあります。

これが、「愛してくれないならここで死んでやる!」ということなのでしょう。

相手のことはおかまいなしに自分の気持ちを押しつける。相手の気を引くために自分の体を傷つける。

確かに迷惑な行為ではあります。もし私がそうされたら、その人と顔を合わせるのは嫌になります。

でも、ただそれだけのことです。「メンヘラだから」とか関係ありません。彼女/彼にはそうせずにはいられない事情があるのでしょう。できることなら、その痛みに寄りそってあげたい。

とは言え、実際の現場でこんなふうに考えられるわけがありません。だから、「メンヘラ」的な行動をする人にさんざん振り回された人が、相手のことを否定したくなる気持ちはわかります。

でも、「メンヘラ」というカテゴリーごと否定されると何とも言えない気持ちになります。さらに、そういう話を聞いた人たちが「メンヘラに気をつけろ!」と言っているのを聞くと悲しくなります。

本人がつらい思いをしているかもしれないと考えたら、そういう決めつけはできないはず。愚痴っても嫌ってもいいけれど、「メンヘラ」の存在を侮辱するのは違う。

個人の事情・背景を一切無視して人を見下す態度には腹が立ちます。そういう人の存在が思い起こされるから「メンヘラ」という言葉に抵抗を感じてしまうんでしょうね。

 

言葉にこだわっているうちは真実をつかめない

「メンヘラ」という言葉は、さほど重要ではありません。

その言葉が、苦しみながら自分や他人を傷つけてしまう人を救うわけじゃないから。

「メンヘラ」というくくりで考えても意味がない。定義してみても意味がない。

あおいうにさんの質問回答サイトにこんな言葉がありました。

メンヘラでもメンヘラじゃなくても私は私です。

Ask.fm より)

「メンヘラ」というものを否定して見下してバカにする人たちの悪意を逆手にとって、芸術として魅せる。

なんてカッコ良いんだろう。メンヘラ展のことを知ってからずっと悶々としていたのですが、ここまで書いて、そう確信しました。

メンヘラ展の作家さんたちがどのような苦悩を抱えながら作品を生み出してきたのか、想像すればするほど、簡単なことではないと思い知らされます。

真実を知るために現実と向き合い続ける人たちの姿は高尚で、私にはできないからこそ心から応援したいと思います。

 

最後に

「メンヘラ」という言葉で人を見下してバカにする人は嫌いだし、人を脅して自由を侵害する自分勝手な人も嫌いです。

私にもそういう部分はあります。自分よりダメな人を探して安心しようとしたり、大切な人に自分の気持ちを押しつけてしまったり。そんな自分は嫌いです。

だからこそ、そういう“迷惑”を認めて許してあげられる人になりたい。寛大な人になりたい。

でも、なれない。じゃあ、何も言わず、そっとしておこう。自分の“迷惑”な部分を少しでも小さくできるように頑張ろう。

そんなふうに思います。

 

<メンヘラ作品?>

気になってます。ブラックな感じだそうで。

<水玉芸術>

「メンヘラ展のブランド化」と聞いた瞬間に草間彌生さんの作品が目に浮かびました。

6 COMMENTS

aki

こんにちは。
以前、こちらにコメントしましたakiです。
メールアドレスも変わってしまいましたし、
かなり前のことなので
もう覚えていないかもしれませんが、、
お久しぶりです。

短大の後期から行けなくなって、
考えたり、悩んだり、自暴自棄になったり
死にたいと思うことも何度もありました。
でも、今、なんとかカウンセラーや
保健室の方の力をお借りして
少しずつ大学に顔を出せるようになりました。
友人関係はもうすべて破綻してしまい(私が悪いのです)、
頼れる人は、数えるほどしかいませんが、
それでも今出来ることをしようと思っています。
といいつつ、絶対また嫌になったり、
つらくなったりで何度も失敗するとおもいますが…。
本当はなぜ自分がここにいるのか、
何をしたいのかよくわからないので
毎日とても不安で怖いのですが、
とりあえず今よりはマシになる…と思って
頑張ろうと思います。
いろんな先生方と連絡を取るのが本当に恐ろしかったのですが、
今はなんとか単位が取れそうな科目の担当教員に片っ端から連絡を取るようにしています。
保健室の方の力がなければできないことでした。

卒業できるか正直わかりませんし、
就職なんて考えることも難しいですが、
なんとかできるとこまでは精一杯やりたいと思います。

ナミさんのブログにはいつも本当に元気をもらっています。
違った視点を教えてもらったり、
何も見たくないときでも
ナミさんのブログだけはなんだか読んでて心地よいです。
ブログをやっていてくださって本当にありがとうございます。
このブログに出会えて本当に良かったです。

返信する
ナミ

akiさん、お久しぶりです。もちろん覚えていますよ。こうしてメッセージをいただけて嬉しいです。ありがとうございます。

そうですね、不安や恐怖は尽きませんよね。akiさんにコメントをいただいたのが11月。それから保健室へ相談に行くまで、さまざまな葛藤があったでしょうし、今も苦しい中で過ごしていらっしゃることと思います。

保健室の方が良いアドバイスをくださったみたいですね。現状を打開したい、頑張りたいというakiさんの前向きな行動あってこその今。すばらしい!

少しずつ大学に行けるようになったこと、担当教員の先生方に連絡を取りながら単位取得のために努力されていること。「これからどうなるんだろう」という不安や恐怖を抱えながらも、こうして「頑張ろう」「精一杯やろう」と前を向いて進んでいらっしゃるakiさんの姿に励まされる思いです。

これまでのことを思い出すと進路や生活について不安を覚えるかもしれませんが、親切な人もたくさんいます。困ったときや苦しくなったときは、保健室の方やカウンセラーさんに相談しながら、一歩一歩進んでいきましょう。

ほんと、akiさんがおっしゃる通り「今出来ることをしよう」、これに尽きますね。

焦らず、じっくり、無理のないペースで。

まだまだ寒い日が続きますので、お身体に気をつけてお過ごしください。akiさんのこと、陰ながら応援していますね。

返信する
紙一重

おはようございます。

わたしは無駄に目立って生きてきたので,思いっっっ切りヒカれたり見下げられたりしたこともあります。

最近では,< http://sukkiri-blog.com/anayuki >であるように,金融機関で障害者手帳を出したら,『あなたはそのお金を動かす能力があるのか』みたいな勢いでなじられたことが一番キツく感じられました。でも,半年ずつすこしのお金になりました。

昔では律儀な相談があだで「薬を飲んでるから」と退職を迫られ……。現在では無駄なことを話さずひっそりとしています。

それでもときどき,「どっかでバレてないかな?」と不安はあります。

実は実話。バイトで学習塾講師をして,生徒にコメントを書いてもらったら,

1「こぅわかった」

ん?なにかあやしいことしたかしら?そのまえに,

「けっ」

けっ?

「けっ
 こぅわかった」

変なところで改行するな~!

2 「はく○気で×た」

え?わたしまだ薬で身体が臭うのかしら?

「よく暗気で×た」

あ,「は」じゃなくて「よ」?

「『よく暗記できた』ですよっ」と生徒。

「あ~びっくりした~,迷惑かけていたのかと思った~」と大げさに目を回しましたが,昔はパニック障害で本当に目を回していたのがバレたのか,と胸が詰まりました。

>何も言わず、そっとしておこう。自分の“迷惑”な部分を少しでも小さくできるように頑張ろう。

至言です。

返信する
ナミ

紙一重さん、コメントありがとうございます。

学習塾エピソード、笑ってしまいました。なぜそこで改行? 「は」が「よ」っていうのもね、ありますね、それね。可愛いなぁ……。そして、“目を回した”の部分、思わず「うまい! 座布団一枚!」が出てしまいました。紙一重さんが大変な経験をされてきたというのに、ごめんなさい……。

引かれたり、なじられたりするのは悲しいですよね。受け止め方は人それぞれだとわかっていても、なかなか割り切れない思いはあります。ひっそりと、という点は私も同じです。不安は尽きませんが、ささやかな毎日に感謝しながら過ごす日々です。

返信する
檸檬

こんにちは。

「メンヘラ」—-。
自分自身で認識している言葉です。
でも、それを口に出さず陰で「あいつ『メンヘラ』だから気を付けた方がいいよ」なんて言葉を遠まわしに言われている事実を知ったとき、本当に悲しく、情けない気持ちになりました。

それは、私の事を知らない筈の人たちにまで飛び火して…。

友人もいつの間にか去り、ほんの一部の人としか話せなくなりました。

けれど、ナミさんのようにネットを通じてでも理解してくださっている方に遭えた事を本当に嬉しく思います。

また訪問させていただきます。

返信する
ナミ

檸檬さん、コメントありがとうございます。

そうでしたか、そんなふうに言われるのは悲しいですね。

すべての人に理解してもらうのは難しいことですが、理解しがたいことだからこそ、傷ついた心を察してくれる人の優しさが身に沁みます。そういう人を大切に、感謝の気持ちを持って過ごしていきたいものです。

返信する

紙一重 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です