ダメダメな自分に手紙を書こう。自己肯定の歌:クラムボン「便箋歌」

女の子

こんな手紙をもらいました。

地道にやるしかないですよ。

自分にできることを精一杯やれば、それでいいんです。

周りは気にしないでね。比べてたらきりがないし、コツコツやってるうちに、気づいたら「あれ? できるようになってる?」って感じなんだと思います。

まぁ、そんなこと言われなくてもわかってますよね。でも、すぐ比べたくなっちゃいませんか? だから、不安になったときこそ、目の前のことに集中してください。

自分ができることをやりましょう。やると決めたことから順番にやっていきましょう。

焦らなくて大丈夫です。確実に進んでいくこと、やめないことが大事です。

休憩もちゃんとしてね。

1か月前の自分からの手紙です。

さすが、私のことよくわかってますね。

ダメダメなあなたを受けとめる歌

自分で自分を認めるのは難しい。

「頑張ったね」ってなかなか言ってあげられない。

「ダメなところばっかりな自分。だけど、それでいいのだ。胸を張って生きていけばいいのだ」

……なんて、とてもじゃないけど思えない。

そうやってダメなところばかり見つけてため息をついてしまうとき、「OK」と言ってくれる歌があります。

クラムボンの「便箋歌」です。

今日はあなたに手紙を書きます
あなたを見てきたわたしなりに

「わたし」から「あなた」に宛てた手紙。私はこれを「自分」から「自分」に向けたメッセージとして聴きます。

何気なく聞いているだけで「うぅぅ~」と泣けてしまいます。私はどうやら認めてもらいたがっているらしい。心の揺れによってそう気づきます。

グッとくるポイントは、「あなたはほんとにダメダメなひとね(……)いつまでもモヤモヤ抱えています」からの

そんなあなたでいてほしくない 願う私を忘れないで
そんなあなたも好きでいたい この声は聞こえてますか?

同様に2番も。

どんなあなたも受けとめたい 願う私を忘れないで
どんなあなたも嫌いじゃない この声は聞こえてますか?

ダメだ、今こうやって引用するだけで泣けてくる……。

それはきっと「こんなダメな自分を認めちゃいけない」という思いがあるから。受け入れてもらいたがっているのに、自分で必死に否定し続けている。

でも、原田郁子さんの柔らかな歌声を聴いていると、ちょっと素直になれます。優しく語りかけるような言葉も心地よく、思わず「へへへ…」と照れ笑いしてしまう感じ。目や鼻から水を垂らしながら。

うまく笑えないこの自分さえも受け入れてくれる人の存在。それは一体誰でしょうか?

クラムボンの便箋歌とアンジェラ・アキの手紙

「便箋歌」の他に、自分に宛てた手紙をモチーフにした歌として有名なのは、アンジェラ・アキさんの「手紙~拝啓 十五の君へ」ではないでしょうか。

クラムボンの「便箋歌」は、何気ない日常を過ごす自分に宛てたメッセージ。穏やかな陽だまりを感じさせる雰囲気です。

一方、アンジェラ・アキさんの「手紙」は、15歳の自分に宛てたもの。思春期の荒波にもまれ、傷ついている心を力強く抱きしめてくれるような歌です。

クラムボンver. がほのぼのワールドなら、アンジーver. は劇的な冒険物語といったところでしょうか。

また、「I」と「You」の立ち位置にもちょっとした違いがあります。

クラムボンの「便箋歌」は、書き手が一人。今の自分が、過去の自分に語りかけ、未来の自分に期待します。それぞれに明確な境界はなく、一体感があります。「わたしたち」という歌詞からもそれを感じられます。

アンジェラ・アキさんの「手紙」は、過去の自分から未来の自分へ → 未来の自分から過去の自分へと書き手の立ち位置が入れ替わります。まるで2人の人間が別々に存在しているようです。私の頭には、「15歳の僕」と「大人の僕」が向き合っている映像が浮かびます。それは、15歳という明確な線引きによって、存在が切り取られているからかもしれません。

さらに、「便箋歌」は、メッセージが宙を舞っている印象を受けます。「あなた」は「わたし」の存在に気づかず、何も知らないまま、何気ない毎日を送っている。

一方の「手紙」。受け取り手である「15の僕」は、メッセージを欲しています。救いを求めてもがいている姿、切迫感がひしひしと伝わってきます。

何気ない日常と、痛みを伴うストーリー。

演奏者の情感によって、自己肯定の歌は表情を変えます。

私から私へのメッセージ

過去の自分に向けて手紙を書いてみるのは、悪くないですよね。これまでのことを振り返れるし、気づいたことを伝えるという体で、成長を実感することができます。

ひとつ残念な点は、過去の自分がそれを読むことはないということ。それを読むのはあくまでも今の自分。そういうこともあって、私は未来の自分に向けて書くことが好きです。

未来の自分は、世界で一番自分のことをわかってくれています。未来の自分がいると信じられないときでも、例えば、明日の自分、1時間後の自分なら、想像するのもそれほど難しくありません。

また、冒頭の手紙のように、過去の自分が励ましてくれることもあります。私はいつだって私の味方です。

未来の自分に話しかけるように書く日記、これまでにも何度か紹介しています。

参考:うつ病回復期のモヤモヤ解消法 ― とりあえず今の気持ちを紙に書き出してみる

私が未来の自分に向けて書くことが多いのは、読んでもらうことを期待しているから。書く行為自体に意義があるのだとしても、宛てた相手に読んでもらえないのはちょっと寂しい。

それはやっぱり、「受けとめてほしい」「わかってほしい」という思いがあるからなのでしょう。

ちなみに、このブログは過去の自分に向けたものです。壮大な言い訳とも言える内容です。私が想定しているのは「過去の私」だけではありません。「過去の私」から抽出したものによって再構成した「過去の私’」。あるいは、私によく似た「わたし」や「ワタシ」。

今の自分が持っているもの、経験してきたことを伝えながら、すべての「私」を肯定するための手紙を書き続けているのかもしれませんね。

結論

それより早く子猫を飼いましょうよ

大賛成。

 
子猫

にゃーん。

<本日の音楽>
クラムボン「便箋歌」2001年

クラムボンの歌を聞くと、ホワホワしてきます。そのホワホワ感に強力な解毒作用があるわけではないけれど、それだけ優しいものだからこそ、自分の中の毒が抜けたときに聞くと、心地好くて幸せな気分になります。綿菓子みたいにフワフワして甘くて絵になるけど、口の中ですぐに消えてしまう。その後は、残された余韻に浸る。そんなイメージ。

オリジナルアルバムは「JP」(デビューアルバム)しかちゃんと聴いたことがなかったのですが、最近の楽曲を聴いたら、めっちゃカッコ良くて、かなりハマりそうな予感です。改めて「JP」も聴き返してみたら、めっちゃカッコ良くて、私は一体何を聴いていたんだ!? という小さな憤りと戸惑いを感じ中。

 
アンジェラ・アキ「手紙~拝啓 十五の君へ」2008年

何度聴いてもくるやつです。

3 COMMENTS

あひる

初めてコメントさせていただきます。
ずっとずっと2年ほど前から自分でわかるくらい情緒不安定で、どんどん疲れて頭いっぱいで笑うってなんだっけ?自分が毎日大嫌いで許せない!私なんていなくなれ!状態の私です。
ナミさんのブログに今辿り着いて、たくさん読ませていただきました。本当になんでか分からないけど、読みながら涙が止まらなくて、でもスッキリしている自分がいます。私も同じく1985年生まれで、勝手に親近感感じながら、ナミさんすごいな、私もナミさんのようになりたいなと尊敬のまなざしです。
ブログを作ってくださってありがとうございます。ナミさんのブログ楽しみにしています。

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のぞ

はじめまして。
昨年初めより、人生二度目の大きなうつを経験しているのぞみです。
プチうつはもっと前からありました。

恐らく昨年末にもお邪魔してました。
本日、また検索ワードで引っかかり(本日のキーワードは「嫌なこと 思い出さない」的な感じだったと思います)、お邪魔し、色々読ませていただきました。

そんな中、6年近く音信不通になっていた大学時代の親友と本日連絡が取れ、嬉しかったです。
これまでも彼女のことは考えることがあったのですが、実際にメールを送るまでは行ってなかったんです。
彼女との連絡が途切れてしまっていたことも、わたしの中では将来に対しての悲しいイメージに一役買っていたので、これを機会に徐々にいい感じに行かないかしら~?と思っていますが、明日、明後日、明々後日にならないと予測はつきませんねー。

勝手に同じくらいの年頃の方と思っていたら(他人って勝手に自分と同じくらいって想像しませんか(笑)?わたしは思うこと多いです)、なんとわたしよりも一回りもお若いではありませんか☆

うんうん、分かるわー、と思いながら読ませていただきました。
あ、今日は起き上っていた+親友と連絡が取れたおかげで、かなり普通(うつではないとき)の自分の感覚です。

『ラジ・ピース』、今度読んでみようと思います(^-^)。
ではでは☆

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カズ

初めまして。自分を励ましたい時にこちらのブログを拝読させて頂いております。私は鬱などの病気は発症しておりませんが、数年前に職場の人間関係に苦しみ、離婚を経験しました。仕事は今も続けておりますが、家庭を失った喪失感からなかなか立ち直れずにいます。消えてしまいたいと思わない日はありませんが、一日を何とかこなしています。ナミさんのブログに巡り合う事ができ、記事を読んで、声を出して泣いた事も何度もあります。優しい語り口の記事に助けられている人間がいる事をお伝えしたくて、メールさせていただきました。これからもずっと読ませていただきます。

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