ナミうつブログ

「うつ」のお悩みを軽くするヒントを双極Ⅱ型障害の人が模索するブログです。

『うつ病の真実』野村総一郎 ― 臨床医が書いたうつ病の概念史

 

精神科医・野村総一郎先生の著書『うつ病の真実』を読みました。

めちゃくちゃ面白かったです。勉強になるのはもちろん、知的好奇心を満たしてくれると言ったらいいでしょうか、「へぇ~」「そうなんだ」連発のお話がたくさん紹介されています。もっと詳しく知りたい人のために、各所で解説書や入門書の案内があるのもありがたいところ。一般の人向けに読みやすく工夫されています。

内容もさることながら、野村先生の語り口がすごく好きです。ちょっと難しい話が続いて疲れてきたところで、意外な言葉がポンッと飛び出して(例:ウルトラマン、こんにゃく、ちょいワルおやじなど)「ふふっ」となったり、「なんでやねん!」とツッコんだりしながら楽しく読み進められます(実際には「なんでやねん」とツッコんだところはなかったですが、イメージ的にはそういう愉快な感じです)。

何より素晴らしいのは、巧みな比喩。難しい用語が並んだ文章に「???」となっても、その直後にカジュアルな例え話で説明してくれるので、感覚的に「なるほど」と理解できます。野村先生ご本人も「変な喩えになるが」というエクスキューズを入れていますが、全然! いいよ! もっともっと! と合いの手を入れながら読みました。

うつ病のつらさについては、こんなふうに書かれています。

うつ病は正常心理をはるかに超えた壮絶な病である。現実認識が歪み、わけもわからず、まるで「神経学的な運動障害」と言いたくなるくらい、動くのに不自由になる。たった一メートル向こうの物を取るのにも、千里の道を旅するようなつらさを感じる。身体の不調は本当の臓器疾患に負けないくらい、とても「気のせいですよ」と単純に切り捨てられない水準である。

(p.272)

「千里の道を旅するような」、ほんとコレ。力も果て、途方に暮れてしまうのです。「しぇんしぇい、わかってくれますか、うお~ん(泣)」という気分になります。

と言っても、『うつ病の真実』は、不調のときにはほとんど読めず、長い間「積読」にしてありました。

主な内容は、うつ病の概念史で、うつ病を治す方法や社会復帰を目指すための解説本ではありません。地獄の真っ只中で苦しんでいる人向けというよりは、サポートする人向けの本でしょうか。あるいは、自身の病気を俯瞰的に、距離を置いて見ている人。

もちろん当事者にとっても参考になる部分はあります。

「私は本当にうつ病なの?」
「ちゃんと治るの?」
「なんで私はこんなに落ち込むの?」

こういった疑問に対する答えやヒントを見つけられます。

進化生物学や化学など理系的な切り口もあれば、ギリシャ悲劇や旧約聖書から読み解く文学的アプローチもあります。歴史的な流れを追いながら当時の価値観を鑑み、うつ病がどういうものか見てみよう! という構成はまるで知的探検のよう。とにかく幅広い知識を網羅していて、「どんだけ~」と何度も言いました。

うつ病の知識だけでなく、私が興味を持っている「言葉」についての考察もあります。

実態がはっきりしているものは呼び名と本質の間にずれが生じないが、実態が「曖昧な」物に、「明確な」呼び名をつけると、本質とは異なるものが一人歩きしたり、呼び名のほうが本来なかった実体を作ってしまう可能性すらある。

(p.128)

私がまさに知りたいことです。こういったことに対する違和感、「おいおい」「ちょっとちょっと」「何か変じゃない?」とツッコみたくなるポイントをはっきりさせたい! という思いがあります。

何かを正確に語ることは本当に難しいことです。本書では「何のためにこの言葉を使うのか」という目的がきちんと示されているので、いろいろな問題をごっちゃにせず考えることができます。

この本のタイトル「うつ病の真実」という言葉もそう。本来なら「気分障害の真実」が正確だけど、一般的な認識を考慮すれば、「うつ病」の方が伝わりやすい。

コトバの使い方は本質的な問題に関わることを踏まえて、野村先生はこう言います。

「一般の人が『うつ病』と呼んでいる病気の全体呼称は『気分障害』とすべきである」ということを指摘し、それがわかっていて、確信犯的に、今後も全体を表わすコトバとして「うつ病」を本書では用い続ける宣言をする。

(p.151)

わかりやすさを優先するか、正確さを優先するか、悩みどころですね。特に専門的な話題は、その兼ね合いが難しい。私はわかりやすさを求めてしまうので、「正確にはちょっと違うんだけどね」という専門家の皆さんの声をいつも心に留めておかなければいけないなぁと思いを改めました。

本書の趣旨は、広い視野から真実をあぶり出そうすること。そのために挙げられたテーマがどれも興味深く、モヤモヤ解消のヒントにもなりそうなので、関連書籍と併せて、改めてブログにまとめられたらいいなと思っています。

  • 適者生存
  • 不安とウツの働き
  • ユウウツが進化した理由
  • ジェインズの理論・二分心
  • 双極スペクトラム概念
  • うつ病治療・予防のポイント
  • アロスタティック負荷

などなど。この他にもさまざまなテーマがあるので、興味のある方はぜひ。

しんどいときは読むのが大変かもしれません……ので、もう少し読みやすいものとしては、↓こちらがオススメです。

「うつ病は甘えではない」が前提の『「うつ」は病気か甘えか。』

「うつ病とは何ぞや?」というテーマで、うつ病知識をわかりやすく学べます。

 - 「うつ」関連書籍 

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