ゆるい生き方読本『持たない幸福論』は心を軽くしてくれます

phaさんの新著『持たない幸福論』を読みました。

紹介文には「京大卒・日本一有名な“ニート”が提唱するこれからの生き方」とあります。ニートというポジションの是非は置いておいて、私はphaさんの物事の捉え方や考え方に好感をもっています。phaさんの文章を読むと、肩の力が抜けてホッとするんですよね。

phaさんの「だるい」というつぶやきを聞くたびに、私は安心感と罪悪感を覚えます。本当はだるくてしんどいのに「そんなこと言っちゃいかん」って我慢してるから。

この本は、生きるのがしんどい理由とその背景をわかりやすく教えてくれます。そして、「こんな考え方やこんな生き方もあるよ~」と多数派以外の選択肢を示してくれます。

すごいと思ったのは、「持たない幸福論」と題してphaさんの考えを述べているだけなのに、読者である私から「私の幸福論」を引き出していること。

共感する部分が多いからか、この本を読んでいるとphaさんと会話をしているような気分になるんですよね。「僕はこういうのが好きなんだよね」「こうしたら楽しかったよー」という話を隣で聞いているみたいな感じ。だから自然に「私はこう思うなー」「あんなふうにしたいな~」とイメージが浮かびます。それがすごく心地好くて。(phaさんは大阪出身らしいので大阪弁なのかな?)

淡々とした語りを読み進めるにつれ、心が穏やかになって、自分の中に押し込められていたささやかな喜びが育っていくのを感じました。

心も体もめっちゃゆるゆるダラダラしていい感じになるので、ずっと読んでいたいな~と思うような文体と内容です。

ちなみに、このような弛緩状態は「怠惰」と呼ばれ、世間はこれを嫌います。が、そんな健全な思考を持った人にもぜひ読んでいただきたい、生物多様性について考えるための本がこの『持たない幸福論』なのであります。

phaさんのバランス感覚に学びたい

この本の中にいいなぁと思う言葉がたくさんあって、

「大抵の悩みごとは休息を十分に取れば半分くらい解決する」

「自己責任は50%」

「去る者は追わず、来る者はたまに拒む」

「何かを悪く言うときは『どっちもどっち』だということを意識しておくのが大事」

この言い切らない感じがすごく好き。

「よくなくなった」のような表現もよく使われていて、私だったらこれを「悪くなった」と言いがちです。でも、「よくない」と「悪い」は同じじゃない。「悪い」は悪いしかないけれど、「よくない」はよい以外全部。ここ、私の要注意ポイントです。

phaさんは、東京と熊野の家を行き来したり、イベントを主催して人とのつながりを作ったりされていて、バランスを取るのがうまいんだなーと思います。不安定なものを安定させるための土台を上手に作る人。

その土台は柔軟で寛容……今浮かんだイメージで言うと、球体を四角い枠にギューッと押し込んで固定するのではなくて、砂浜にポンッと転がしておいてくれる感じ。

コロコロ転がっていかないようにしつつ、でも自由! しかも、海キレイ! みたいな。

息が詰まることがなく、開放的です。

人とのつながりも孤独も素晴らしい

この本を読んで感じたのは、phaさんは人が好きなんだなぁ~ということ。

私は一人でいるのが好きだし、少人数でも人が集まるところにはあまり行きたくありません。病気になって話しづらいことが増えたし、めんどくさいから。

そりゃ「寂しいなんて思わない」と言えば嘘になるけれど、一人の方が気楽だし、安心します。

そういう点でphaさんとは違うなと思ったのですが、すべて読み終えてから、「人とのつながり」にも人それぞれの形があるんだと気づきました。

世捨て人や仙人のように生きる以外に、人と一切つながらずに生きていくのは困難です。誰でも必ず何かしらのつながりが発生します。そのつながりの違いは、つながりの糸が太いか細いか、長いか短いか、多いか少ないか。

私は一人でぼーっとしているのが好きなので、つながりの糸は細くてひょろひょろ~っとしたものが数本あれば十分です(実際には、数えきれないくらいたくさんの人に支えられているんですけど、自分がはっきり実感できる範囲で言うとそんなイメージです)。

いろいろな人の話を聞いたり、友達とワイワイ騒いだり、好きな人とくっついているのも楽しいけれど、あとでどっと疲れてしまうんですよね。だから、もういいやってなっちゃう。

今までずっと「うまく人付き合いをしなければ」というプレッシャーを感じていたのですが、人間関係は距離を置いた方がうまくいくこともあるし、一人でいたけりゃずっと一人でいればいいんだなと思いました。

大切なのは、自分に合った“つながり”を適宜調整していくこと。

phaさんは、自分の価値基準をはっきり持つためには、自分とある程度価値観が近い仲間を持つと良いと言っています。なるほど確かに、と納得しつつも、私はそれを探すのがめんどくさいので「死ぬまでに出会えたらラッキーだな」と思っています。

孤独はそれほど悪いものではありません。一人の時間はとても豊かで味わい深いものです。

これも“つながり”あってこその喜びなのでしょうか。phaさんの考えをこうして受け取っていることも一つの“つながり”なのかもしれません。この感覚はなかなか面白いものです。

自分の「楽しい」「好き」を知ることから

自分の価値基準がなく、他人の顔色を見て物事を判断していたかつての私がこの本を読んだとしても、今のように心から納得することはできなかったと思います。

「こんなふうに考えるのはいけないことだ」
「優しい言葉を探して甘えたいだけだろ?」

で、自分を責める。

いくら自分を責めたって答えが見つかるわけではありません。それどころか、自分を苦しめるばかりで、得られるのは痛みだけ。

だからまずは、自分に問うてみることから。

あなたは何をしているときが楽しい?
あなたが本当に必要としているものは何?

自分の人生を他人が生きることはできません。だから、思うようにやればいい。好きなように生きればいい。

それを決めるのは自分。責任を引き受けるのも自分。

……と、「早く社会復帰しなければ!」と焦ってパニクっていた頃の自分に伝えたい。カキンカキーンとはね返されてしまいそうですけど。

最後に

印象に残ったphaさんの言葉があります。

本というのは「自分がぼんやりと気づきかけていることをはっきりと言葉にして教えてくれるもの」

私にとって、この本がまさにそれ。

「あーーー、もうやだぁ~~~」となったら、何度でも読み返したいと思います。

白湯が飲みたくなる本です。

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