いつも我慢している人・打たれ弱い人に『ムカつく相手にガツンと言ってやるオトナの批判術』

カクレクマノミ

あなたは今、我慢していることはありますか? 家族や周囲の人たちの言動にイライラしてしまうことはありませんか?

不愉快に思うことがあるにもかかわらず、場の雰囲気を壊さないためにじっと黙って耐えているのだとしたら、それは精神衛生上よろしくありません。

だからといって、いちいち不平を言って場の雰囲気を壊したくはないし、そんな非生産的なことに時間を費やしたくない。だから、黙っているのが一番。そんな思いから自分の気持ちを抑えている人もいることでしょう。

でも、あなたが自己犠牲を払うことが最適だとは言えません。あなただけが我慢する必要はないし、それ以外の方法で良い人間関係を築くことは可能です。

そのための方法を教えてくれるのが、今日ご紹介する本『ムカつく相手にガツンと言ってやるオトナの批判術』です。

著者は、20年以上にわたりコミュニケーショントレーナーとして活動を続けるバルバラ・ベルクハンさん。実践的なコミュニケーション術を著した本はベストセラーになり、11か国語に翻訳されているのだとか。先日ご紹介した『グサリとくる一言をはね返す心の護身術』のそのうちの一つ。今すぐ実践できるちょっとしたテクニックや心理的な原因分析を交えた説明はわかりやすく読みやすい。納得感のある内容です。

本書は「ムカつく」シリーズの第三弾。各シリーズの表紙には、青筋をピキピキさせた女性が描かれています。第一弾・第二弾では笑顔を引きつらせていた女性が、第三弾の本書ではついに怒りを爆発させ「ビシッと言ったるぞ!」という表情に。

でも、タイトルやイラストの印象よりはかなりソフトな内容です。表紙イラストの女性はめちゃキレてますけど、こういう言い方をするわけではありません。紹介されているのは、自分の気持ちを上手に表現する方法です。また、青筋ピキピキ女性の周りには男性のイラストも描かれています。ガラスのハートを撃ち抜かれて「うわあぁ~もうダメだ~」とゴロリンゴロリン転がっていますね。こういった打たれ弱さを克服する方法も学べます。

ベルクハンさんは、冷静に・客観的に・端的に伝えることを是としています。そんなスマートなコミュニケーション術を教えてくれるのが本書なのであります。

批判への恐れを和らげる術

他人の批判は役に立ちます。自分の欠点を改善するきっかけを与えてくれるものだからです。

しかし、現実で受け取る批判の中には、何の役にも立たない無意味なものもあります。

多くの人は正しい批判の仕方を学んでいないため、人を傷つけるような言い回しをしてしまいがちであるとベルクハンさんは言います。

確かに、いくら正しいことを言っていても、感情的な伝え方のせいですべて台無しにしてしまう人っていますよね。たとえ人を傷つけるような言い方はしていなくても、建設的で役に立つ批判を穏やかに伝えるのは難しいものです。トゲトゲした批判から学ぶためには、有意義なものだけを上手に取り出さなければいけません。

また、こちらが相手に対してフィードバックすることも大切です。日頃から不満をため込んでいる人は特に。いつも我慢してばかりいると、限界がきたときに大爆発してしまいます。そうならないためにも、言うべきことは言わなければいけない。自分が不愉快な思いをしたときには、何でもない顔をするのではなく、お互いが気持ちよく過ごせるように、きちんと話すことが大切。

そうは言っても、これまでの行動を変えるのは難しいものです。ベルクハンさん自身も、もともとは事を荒立てないよう黙っているタイプの人だったのだとか。それでも、本書に書いてあることを心がけることで、長年培ってきた性質を変えることができたと言います。

・何でもかんでも我慢しない
・言うべきことは言う
・人の話はきちんと聞く
・無意味な言葉は受け流す

具体的にどうやって? そのための練習法が本書では紹介されています。どちらかというと気持ちの持ち方・心構えのようなハウツーが多めです。

他人に対して強い恐れを抱いているときには、なかなか実行するのが難しいことです。それでも、「なぜそれが必要なのか?」「これを実行することで何が得られるのか?」を知ると、ちょっと勇気が湧いてきます。それが現状を打開する第一歩。

反射的に顔を背けるのではなく、傷つかないための準備をして向き合ってみる。

そうやって少しずつ少しずつ。

批判をうまく扱えるようになれば、人間関係は円滑になり、自分自身を大切に高めていけそうです。

いつも我慢している人や打たれ弱い人に

人間関係に悩んでいる人は、この本から学べることがあるのではないかなと思います。特に、日頃から文句を言わず我慢している人。そして、打たれ弱い人にも役立つパートがあります。

その他にもこんな人は要チェック。(pp.41-42)

  • 不愉快だと思っても、雰囲気を壊したくないので、周りに悟らせない。
  • 他人の誤り、無礼、粗雑さによく気がつく。けれどもほかの人は、まったくそれに気がついていない。
  • 当事者に言う代わりに、他人にこぼす。
  • 争いを好まない。
  • たいていの場合、穏やかで冷静な人間だと思われている。また、自分でも不平屋でないことに誇りを持っている。
  • 傍目にはそうみえないように振る舞っているが、内面的には非常に感じやすい。
  • もし何かで神経が参ると、皮肉を言うことがある。
  • あまりにも控え目にし、いつも周りに合わせているために、心の底ではものすごく怒っていることがある。
  • 相手の無神経さに自分がカッとしそうだと思うと、その人を避ける。

……どれも身に覚えがあるぞ? という人もいるのではないでしょうか。

上手なフィードバックを実践できるようになれば、大切な人との信頼関係を深めることができるでしょう。本書には、我慢したり怒りを爆発させることなく、穏やかな気持ちで過ごすアドバイスが詰まっています。

例えば、批判をリラックスして受け止めるためのポイントをまとめた「緊張を解く7つの信念」(pp.183-184)。

  • 他人が私について気に入らない点を述べるのは、まったく正常なことだ。
  • ほかの人が私を批判したとき、それについて口を出す前にゆっくりと検証してかまわない。すぐに反応しなくてもよい。
  • 批判にきちんと耳を傾け、それについて何も言ってはならない。
  • 人が間違いだとしたことが、客観的にはまったく間違っていないことが時々ある。人は、ただ自分の意見を言っているだけだ。そして、それでいいのだ。
  • ほかの人が私にする判断は、ただその人たちの考えや見方に過ぎない。だから、何が何でも受け入れる必要はない。また、それに反論する必要もない。
  • 建設的な批判から、自分にプラスになるものを選び出すことができる。
  • たとえ他人から厳しく批判されることがあっても、私はいままでどおり価値のある、愛すべき人間であることには変わりない。

「そんなことわかってるよ、わかってるけどできないから困ってるんだよ」

そう言いたくなることもありますよね。そのあたりの気持ちについても、ベルクハンさんはフォローしています。

どんな批判を投げかけられても、自分という存在そのものを否定されているわけではない。

これを身を持って理解することが大事ですね。どうやって理解するか? それは、勇気を出して、自分の意思を伝えること。自分なりのやり方でもいいし、本書で紹介されている方法を実践してもいい。黙っているだけでは何も変わりません。

その一歩を踏み出すきっかけとしても、本書は助けになりそうです。

最後に

周りの人の批判は贈り物であるとベルクハンさんは言います。

人間関係がこじれると、プラスに思えないことが増えてしまいます。でも、だからこそ、ここに書いてあるような心構えを習得して、自分の存在は揺らがないものであることを知る必要があるのだと思います。

自分の弱点や欠点を教えてくれる他者からのフィードバック。それは同時に、相手が持っている基準、相手が「何を大切にしているか」ということも示してくれます。

ここに注目できるかどうかで、人間関係がうまくいくかどうかは決まると言っていいでしょう。

人との付き合いは面倒です。何が面倒って、お互いの落としどころを見つけるのが面倒。互いの価値観のズレが大きければ大きいほど、妥協点を見つけるのは困難になります。どうでもいい相手なら、サヨナラすればすむことですが、そう簡単に切り捨てられない相手もいます。大切な相手であれば、自分の価値観とのズレがもどかしく感じることもあるでしょう。完璧な人間はいないし、自分と100%シンクロする人もいません。どうしたって話し合いは不可避。互いの意思を伝え合うことが必要になってきます。

本書で扱われている「批判」は、そういう親しい人との関係においても役立つものです。

ベルクハンさん流の作戦、実生活で試してみてはいかがでしょうか?

 

<本日の一冊>
バルバラ・ベルクハン (2012)『ムカつく相手にガツンと言ってやるオトナの批判術』(小川捷子訳) 阪急コミュニケーションズ

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